「命(いのち)五命」
命(いのち)は命令の命と書きます。令は人の集っている場所の下に王様が号令をかける時に用いる玉座がある形を表しており、布告とか法令をいっております。それが「口」がついて命となり、号令をかけるとか命令するという本来の意味になります。それが何故私達の「いのち」を表す文字になったのでしょうか。中国の文献によると私達のいのちに五つの条件があるとしております。即ち「五命」(ごみょう)という考えで五つの命令を受けて私達のいのちがあるので命(めい)を「いのち」という意味につかっているのであります。その基本になるものは先ず何か不思議な大自然の力を「天」といい、その天の命即ち「天命」によって私達は此の世に生れて来たのだとしております。それによって人間として生きるのだぞと命じられておるのでこれを「生命」と申しております。そして中国ではいのちは寿で表しその長さも命令されていると考えてこれを「寿命」と申しております。また私達がそれぞれの人生を歩む上で好き勝手に思うがままに歩みたいけれどもある程度はその歩み方も命令されていると考えこれを「運命」としております。私達は生れようと思って此の世に生れて来たのではなく天の命令を受けて生れて来た以上、その天の命を正しく使いなさいという命令を受けておりこれを「使命」といいます。此の世に生を受けたからには意味のない人生は一人もいない。それに気付くか否かが他の動物と違うことであると言っております。
大本山護国寺貫首 岡本永司