平成22年12月12日(日)




「心  地」

私達はよく心地よい鐘の音とか心地よい風が吹いて来たなどと使います。この心地は辞書によると「きもち、かんがえ、気分」などといっております。今年のように猛暑がつづき暑い暑いと汗をかいている時にサッと涼風が吹いて来るとやさしくほっとしていい心地になります。もちろんココチと読みますが住み心地、寝心地などと他の語と合さるとゴコチとなり、音で読むとシンチとかシンヂとなります。

この心地とは一般的には何か事に接した時に起きる心の状態を言っております。しかし仏教的には心そのものを指しております。
私達に本来具わっている本当の心を大地にたとえて申しておるので心次第で善悪その他凡てのものが生じ、育てられることが大地の働きそのものと同じということになります。ただし仏・菩薩の心地は何事があっても動ぜず、ゆるがぬ大地のような強い念力をもって衆生を導いて下さっているのですが、私達の心地は一向に安定せず、相手次第で心地がよくなったりわるくなったりします。
例えば運動をして汗をかいた人には涼風はいい心地であり、ジッとしている人には寒く感じられます。ここで風には何の罪もありません。同じものでもそれを受ける人の心次第で善くも悪くもあります。
とかく自分のあさはかな心地にふりまわされてゆれ動くのが私達の心と申せます。自分の心をしっかりと落着かせふりかえることで案外物事が心地よくなるものであります。

仏教の心地を目標にして、心をきたえることが大切であります。心が豊かであれば善が育ち、喜びが生れ幸せへの道が開けて、いい心地の生涯を送ることが出来ると申せます。

 

大本山護国寺貫首 岡本永司